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2024年04月27日
校庭の片隅にある昼寝ツリーの下にククリントン13世のお気に入りのベンチがある
魔法助教授のサーラーネネメルと最上級クラスの一部しか知らない緑色のベンチは静かにそこに居て
馴染みのククリントン13世には座ることを許しているのでとってもいい夢を見せてくれる
ククリントン13世はまるっこい体をゆったり伸ばして両手を重ねた上にぽっちゃりほっぺを乗せて夢を見る
はずだったのに花蜂が耳元でぶんぶんうなりまくるので好い夢が見られない
虫よけの呪文は知っていたはずなのに記憶イチジクの効き目が無い
ぶつぶつ言いながら好きな場所を離れて魔法温室に向かうククリントンの緑色のチョッキの背中にピグマリオンが掴ってる
ゆっくり歩いているククリントンの前に立っているヒダマリトゲナシサボテンの影に隠れているトリクルトピンは
どうやってピグマリオンを回収しようかと思いながらその考えを楽しんでいた
細い温室内の観覧コースのヒトニグサとかアリンコジャラシなどの迷惑植物のタネを見つけては
大きな口にぽいぽい放り込んで片付けている園丁のガズバールは
今年の生徒たちは最上級生から初級生まで皆が皆魔法植物を大切にしてないと小呪をぶつぶつ漏らしてる
自分が進んで行く方向にある大きなヒダマリトゲナシサボテンの影に男の子が隠れているのを見つけ
その先をぽっちゃりした男の子が魔法草の花々を見もしないでのろのろ歩いている
これはなにか起きるぞとわくわくが久しぶりにガズバールの胸に生まれる
ガズバールが見ているとトゲナシサボテンの影から背中にランドセルを背負った男の子が小道に出て
こっちを向いてにこっと笑うとぱっと姿を消した
ここの生徒は上級になるといろんな魔法を使って悪戯を仕掛けてくるからガズバールは嫌いだった
それでもふとっちょの男の子が相変わらずのペースで歩いていて
姿を消した生徒はきっとひどい悪戯を仕掛けるんだろうと思ってガズバールは
少し早足でサボテンまで進んでどうなっているのか注意深く周りを見回す
急に背の低いガズバールの耳元で「おや あいつのチョッキになにか点いてるぞ」と声がした
悪戯を警戒していたガズバールだったがそれでもどうしてもマシュマロみたいな子の緑のチョッキに目がいく
なにか悪戯虫じゃあない何かが男の子の背中にくっついている
「おーい生徒さーん、ちょっと待ちなよ」ついつい声が出てしまう
ククリントン13世は少し不機嫌だったのだけど不意に大きな声が掛かったのでつい
「なに?ぼくを誰か呼んだのかな」と小さめな声で返事をしたが上級クラスの誰かがからかってるのかも
と警戒しながら振り向いた…ということは顔が振り向いたので体もそれに続き背中も一緒になって動く
そこを姿消し数式呪文をまとったトリクルトピンがささっと動いてククリントンの背中に回り込み
緑のチョッキにしがみついてたピグマリオンをひょいと摘んで無事回収できたのさ
posted by 熟超K at 11:51|
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魔法小説
2024年04月20日
実はナナーシャクルスはトリクルトピンの居そうな場所を知っている
一度偶然見かけたことがあってそのときはふっと姿が消えたのだけれど
多分あの辺りに透明マントか影隠しの呪文で居場所を見えなくしてるんだわと推理していた
トリクルトピンがマンドラゴラの幼草をやさしく撫でながら小さな声で子守唄を唄っていると
隠しキャビンの横に生えている告げ口草がそわそわし始めたのが分かった
誰かが近くに来ているのだと察知したトリクルトピンはそっとピグマリオンに追跡の木の樹液を塗る
ナナーシャクルスは確かこの辺りだろうと見当をつけて来てみたものの
温室の中は静かでむっしりしているだけでトリクルトピンどころか園丁のガズバールの姿もない
温室内の散策路はとても曲がりくねっていて全体が見渡せないようになっているので
目の前に見えているのは蛸足蔓が捲き付いている龍鱗木と根元を覆っている御伽草の花の群れ
とそのときなにかがちらりと動いた気配があってナナーシャクルスはそちらに目をやる
とてもちいさな人型の動くものが走って向うに行ったのが見えた
ナナーシャクルスもその後を早足で追いかける
隠しキャビンの横に生えている告げ口草が静かになったのを確認して
トリクルトピンは(場所変えなきゃいけないな)と小さく呟き生きているマンドラゴラとヒドラ草を持って
隠しキャビンを出ると収縮スイッチに動作魔法の数式を唱えてキャビンをたたみ背中に背負う
逃げてったピグマリオンは暫く自由にしてやって今夜追跡の木の樹液を辿れば簡単に掴まえられるだろう
むしろさっき隠しキャビンの近くに来ていたナナーシャクルスとこれからどう付き合うのかなと考え始める
posted by 熟超K at 11:57|
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魔法小説
2024年04月16日
ところで、そんなトリクルトピンとピグマリオンの様子を魔法鏡で見ている者がいた
魔法呪文学のタンジュールムーア先生だ
長い顎鬚を編んでその真ん中を錫のクリップで留めてあるのを指先でいじりながらふんふんと頷いている
「やはりこの子は特別だな。呪文でなくなにか別の方法で小人を造りおったわ」独り言は自分にではなく
寂しの塔の3階の研究室に籠っている魔法構造学のネリリルル先生に聞かせるように口にした
そのネリリルル先生は魔法構造学的に解析中の上位攻撃魔法のフレイルと中位防御魔法のスプラッシュを同時に詠唱する方法を検証中だったのでタンジュールムーアの独り言は聞き流していたのだ
トリクルトピンは自分を誰かが覗いているのに気づいて足元に置いてある銀色のタップをそっと踏む
大気中の魔法分子がミニ連続放電の電子振動に影響されて専用キャビンの中を霧で満たす
急に真っ白になった魔法鏡を見つめていたタンジュールムーア先生は首を傾げて「やりおったな」と呟いた
教授室のダンドンダン教授は水晶玉が映してくれるこの魔法学校の最上級生たちの様々な行動を見ながら
タンジュールムーアの魔法鏡が白くなった原因があの問題生徒が造った大気中の魔法分子を振動させた装置に
大きな関心を持った
あの子は魔法だけでなく一般人発明家の頭脳も併せ持っているようだと推察し
それが魔法にとって吉か凶かと思考の源を深く辿り始めた
副級長のナナーシャクルスは庭園を散策しながら柳の木が風に揺れるのを見て心の中が少しすっきりした
クララボウは落ち着きが無いし口は悪いが頭はいい娘だと日頃思うようにしていたのだがさっきは頭に来た
わたしがトリクルトピンのことなんて気にかけてる訳ないじゃないのと考えてることがもう気に入らない
この柳の木が居場所になっている外国人の幽霊がそっと姿を現してナナーシャクルスに話しかける
「…あたしは…あなたが…まちがっているとは…おもわない…あのこは…とくべつなこだから…」
ナナーシャクルスは顔なじみの女性の幽霊に「YUKIさんはあの子を評価してるのね」と会話する
ナナーシャクルスはそれからしばらく幽霊のYUKIと話をして自分の心の中を整理できたので「じゃあ」と言って柳の木の下を離れて今の気分にふさわしい魔法花が咲いていそうな花壇に向かって歩き出す
posted by 熟超K at 11:31|
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魔法小説
2024年04月11日
食事をしているところを見れば、その人がわかると言ったのは
フランスの美食家だったなとあやふや思い出した僕は彼女もその言葉を知っているに違いないと思った
だってイタリア語のメニューが読めるんだから
と僕が怖気づくのはやむを得ないだろう
でも彼女は真に美しくナイフやフォークやスプーンを動かしながら
ときおり今思いついたみたいな些細なこと(この店の飾り付けなど)を楽しそうに褒めるのだ
僕もきれいに食べようと気にしながらもそれが災いしないようにできるだけ男らしく(おっといけない)
爽やかに食事をしたいものだと頑張っているので半分は上の空で答える始末だった
彼女だってそんなに完璧を続けるのは大変なんじゃないかと一瞬考えも過ぎったけど
少なくとも僕が頑張ってるのに比べればこういうお店でのマナーとかは板に付いているのだ
僕らはお店の人とか向うのテーブルで食事をしている中年カップルや銀髪の夫婦っぽい人たちに
どう見えているのだろうとかもし知り合いがこの店に入って来たらとか少しだけ幸せな空想に包まれる
でも気が付くと最後の濃い珈琲とティラミスが目の前に出て来てて
僕にはもうこのふんわり楽しい時間が残り少ないんだと知らされている(彼女も…だろうか)
posted by 熟超K at 22:38|
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混迷恋ばな
2024年04月03日
最上級生クラスに在籍しているのに、わたしはここでは場違いな娘なんだといつも思っているチャルラチャララは人より目立つのがとても苦手な生徒だ
トリクルトピンが勝手しているにも関わらず自由に振る舞えているのをうらやましくも思っている
チャルラチャララがまだ椅子に座ったまま自分のことについてあれこれ考えているのを横目で見ながら
体力自慢のガズリンドムルは教室を出るところだった
魔法使いと言えばなにか頼りなくふわりとした者をイメージされるがガズリンドムルは筋肉が発達している
そのためつい自分で動いてしまうのが彼の血筋の者たちから見るとなんとも残念に思われている
そんなこと自分の知ったことかと反発する心が彼のどちらかと言えば端正な面立ちに苛立ちの皺を刻んでいる
呪文を唱える前に素早く行動すれば何事も簡単に解決できるのに血筋のせいで認められないのが彼の不幸だ
一方魔法植物温室の一角に見えない深魔法で覆われているトリクルトピンの専用キャビンで
もぞもぞ触手を動かしているヒドラ草に蝿をあげながらいつも通り呪文省略魔法を試しているトリクルトピン
今閃いた分子配列模型を左の掌に出現させて眺め始めた
模型は掌の上からすすっと下に降りてトリクルトピンの足元から離れようとしている
そっちに気を取られた隙を衝いてヒドラ草が食べ終えた蝿の残骸を放って今度はトリクルトピンの指を狙う
ヒドラ草の触手が指先をからめとる前に小さな炎がそれを阻みヒドラ草に誰が主人か教え込む
トリクルトピン本人は足元から逃げ出そうとしている小さなピグマリオンをひょいと摘んで自分の顔に近づけ
「おまえはおまえの生みの親のぼっくの傍にいつもいないといけないんだよ」と教えてやる
高さ4センティくらいの生まれたてのピグマリオンはしっかり頷いて小さな両手を胸の前で組んで見せた
posted by 熟超K at 11:33|
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魔法小説
2024年03月27日
幸い、東京と違ってこの街にはべらぼーな高級店はそうは無い
外観もイタリアン、店名もイタリアっぽい、そしてテーブルのメニューも予算でいけそうな範囲
店の名は『グリリア・プリモ』と読める、初めてのグリル料理みたいな意味かな
以前から入ってみたいお店だなとは思っていたが、今日のこのタイミングで寄ることになったのは運命か
6千円のコースと2千円プラスでワインも含めて飲み放題のお得セットを僕は選んだ
僕が誘ったのだから相手にどれにするなんて投げかけたら悪いということと、予算の都合だ
でも彼女はウエイターがメニューを持って奥に下がったとき「良さそうなお店ね」と笑顔で言ってくれた
それだけでも清水の舞台を飛び下りた甲斐があるというものだ
そもそも僕は女の子の笑顔には弱かった
どころか母も含めて女性の笑顔が好きだった
男同士の馬鹿笑いはただの感情の爆発で男同士の微笑みは互いの力量審査の結果出るものだと思っていた
それに比べ女の人の微笑みや笑顔は僕の心を癒したり高揚させたりしてくれる
例えそれが僕の誤解だったとしても構わないくらい女性の笑顔に弱かったのである
ましてやそれが僕に向かい合って楽しそうに笑いながら会話までしてくれる彼女のものだからサイコーなのだ
料理が来るまでの時をお洒落な会話で過ごしたいと思うが生憎ネタがない
まだテーブルに置いてあるメニューを眺めてなにか話題を捻り出さないとと焦る
サラダとかホームメイドブレッド、メインディッシュ、パスタ、ドルチェは読めるし意味も分かる
だがAntipastoってなんだっけ?…そうだ前菜だプロシュート・ディ・パルマって字があるから生ハムか
もっと読めないのがStuzzichinoだ。なんて読むんだろう。一番最初に書いてあるところ見ると…
「本格的なイタリアンレストランなのねこのお店。わぁー楽しみ。ストゥッツィキーノから始まってるわ」
「すごいね。メニューのイタリア語が読めてるんだ。日本語にするとなんになるの?」思わず訊いた僕
「う〜んお通しか口取りかな」さらっと教えてくれたときウエイターがお皿を持って来た
posted by 熟超K at 22:46|
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混迷恋ばな