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2024年12月19日
皆が一斉に窓の方を見ると半分くらいのスペースはもう真っ黒い蠢く虫の集団に覆われている
「あれは大黒兜蜂です」ダン一族の秀才生徒ダンドルルブリンが右手でメガネの縁をくいっと上げてのたまわった
問題はあれが大黒兜蜂かどうかというより彼らの堅そうな装甲が窓ガラスの強度を上回るのかというところにあったので主に悲鳴を上げている女子生徒には意味がなかったということだった
虫類に比較的強いネバク先生は調理室の料理長と副料理長に可愛い虫食い鼠を踏みつぶされやしないかとハラハラしていてまだ窓の異変に気が付いていない
サーラー先生は当番教師のザネックス先生を見つけて滑る足元に部分ウオームをかけて近寄り話しかけようとしていたのでまだ窓を見ていない
ザネックス先生はヒャダインでなくヒャダルコが適切だったかなと反省していてサーラーが近寄って来るのを見て言い訳を考えないといけないと頭を使い始めたのでまだ窓を見ていない
トリクルトピンは窓のガラスに小さなひびが入ったらこの部屋中が大黒兜蜂で一杯になってもっと大騒ぎになるだろうから自分が逃げるか闘うかだと決めるより一番近くに居るザネックス先生に声を掛けるのが最良だと判断している
「ザネックスせんせー、窓に蜂が一杯ー!」というトリクルの声と「ヒャダイン解いて頂けますか―」というサーラー先生の声と女子生徒の悲鳴と男子生徒のぎゃーぎゃー声が同時に響いてとにかく部屋の騒々しさは三倍以上になった
階下の師範食堂では二人の助教授が騒音を鎮めに行ったのに一向に収まらない騒ぎに各先生方は自制心の許容力を競うはめになっていたけれど
ついに魔法植物学教授のドドドネックル先生がナプキンをテーブルに置いて両手のナイフとフォークを立てて
「どなたか沈黙静寂環境魔法の呪文をご存知ではないでしょうか」と眼の前の宙に問うた
「あの呪文は確か30年前の魔法教育充実法の改正時に使用禁止になったのではないでしょうか」と魔法世界史と魔法呪文学の権威であると日頃自称している講師のタンジュールムーア先生が呟く
そのうち階上の騒動はレベルアップしていき微かではあるけれど甲高い女子生徒の悲鳴まで聴こえて来る
とうとうグリュリュグララ副校長が「お二人の先生だけでは手に余る状況が想定されますので恐れ入りますがどなたか様子を見に行って頂けますか」と言いながら講師のタンジュールムーア先生に視線を送る
posted by 熟超K at 21:55|
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魔法小説
2024年12月08日
食堂の中は強力なヒャド系呪文のせいで床の大部分とテーブルの脚の半ばまで白く凍てついている
足裏の滑りを気にしながら魔獣攻撃魔法が専門のネバクチュールダルドは強力なヒャド系魔法(恐らくヒャダイン)の効力を今解除するとうじゃうじゃいる汚染虫がまた動き出すのを避け凍り付いていない汚染虫が入り込んでいる調理場を助けようと決めた
「よーし出て来い」教師用マントの袖から黄色の毛並みも鮮やかな虫食い鼠を調理場に向けて10匹ほど放つ
黄色いこの連中は魔獣狩りの際のおとり用に飼っている大虫喰らいの働き者だ
虫食い鼠はささっと走り去ってじきにかりかりいう虫食いの咀嚼音があちこちで聞こえ始める
「料理長ー!鼠は虫を片付けてくれるんでしばらく放っといてくれ」大事な鼠が踏みつぶされたりすることがないように声をかけるのは忘れていない
呪文記憶学科の助教授のサーラーは寒すぎる食堂の温度を上げなくちゃと思って部屋全体にウオームンをかけようかと思ったがそうなると虫の一部が溶けた氷の中から出て来るんじゃないかと怖気を震う
だが年上の同僚のネバクが袖から黄色の働き者を放つのを見て虫はあいつらに任せておけば大丈夫と踏んで自分はヒャダインなんて大げさな魔法をかけた当番教師に魔法のかけ変えを頼もうと食堂に踏み込む
テーブルの上に立っているトリクルは美味しそうだった朝食の無残な姿を見てため息をつく
自分は踏まないように気を付けて上ったのに後から慌てて上って来た同級生たちがぐしゃぐしゃにしたのだ
可哀相な朝食たちのためにこいつらにお仕置きしてやれないものかと周りを見回したとき変な音が聴こえた
窓の外からその音が入って来るのが分かり聞耳感度を上げる
ぶーんという低い音はまだ小さいものの着実に大きさを増している
ということは音の元が近づいていることだと気付いて身構えるがまだ誰も気づいていないようだ
食堂の入口に姿を現した二人の教師もまだ気づいてなく一人は調理場に気を取られているしもう一人は凍った足元に注意しながら今朝の当番教師のザネックス先生に話しかけようとしているところ
そのうちぶーんに混じってかちんという音が聴こえた
食堂の大きな窓に黒い粒が見えてそれがどんどん増えているのがわかる
トリクルにはその黒い虫が大黒熊蜂だと分かってる
「せんせー窓にも虫がー!」そのとき窓に近いテーブルに乗ってる生徒が叫んだ
posted by 熟超K at 23:03|
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魔法小説
2024年11月24日
トリクルトピンは嫌な感じが不意に襲って来たのではっとして周りを見た
少し離れたテーブルの下はザネックス先生のヒャドで凍って白くなっている
この寒気かなと思いかかった途端もっと最悪な予感に包まれて慌ててまだ朝食の食器が載っているテーブルの上に靴を履いたまま飛び乗った
向かいの席のタリリンドララがそれを見て目を丸くしてすぐに口も丸く尖らせて「なんて無作法なんだ君は!」と叫んだのだがそのタリリンも足元を見て慌ててテーブルの上に這い上がった
床を黒い物の流れが幾筋もうねっている
次々に女の子の悲鳴が上がりすぐに男の子の叫び声も上がる
そして全部のテーブルの上は生徒たちで溢れかえる
落ち着かねばとザネックスアルリエールは生徒たちほぼ全員がテーブルの上に避難しているのを確認した上で
自分もテーブルに登って少し震える声でヒャダインを唱えると杖を床に向けて振った
広い食堂の床がザネックスの避難しているテーブルの下からさぁーっと白く凍り付いて行ってさらに調理場にまで広がっていく
学生食堂の料理長アジズボワールは大声を上げて床に熱々のスープをぶちまけ料理長補佐のナムルネムは洗い流し台に飛び込んだ
騒ぎは師範食堂で優雅に朝食を摂っていた教授・助教授たちの席にも届き異変に気付いた師範食堂料理長のアジズボヌールナグラの「なんだこの騒ぎは!」という痛罵にネバクチュールダルド助教授が反応した
ネバクとサーラーは食堂の出入口近くの席だったことと助教授という立場上さっと立ち上がると学生食堂に向かうことになった
ちなみに師範食堂は食堂棟の2階で生徒食堂は1階にある
二人の助教授は念のためスティックを持ち師範マントをひるがえし普通に早足で階段を下りて生徒食堂に急行しようとしていたが階段踊り場を過ぎると尋常でない冷気に気付き気を引き締めた
「ヒャド系の魔法がかけられている!」「ええそれも強力な奴だわね」簡単な会話の後二人はそれぞれ自らにウオームを唱えて温かさを保てるようにして現場に向った
posted by 熟超K at 15:40|
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魔法小説
2024年11月16日
実はこの朝は平和な朝食時間にひとつの事件が起きていたのだった
気が付いていたのはクラスのはみ出しっ娘クララボウとパープル色の髪の内気なチャルラチャララだけ
クララとルームメイトのネイムルキャレラが向かい合って朝食を摂るテーブルとチャルラがルームメイトのハナレンブリンと向かい合っているテーブルの間の通路に何か動いているのを二人が見つけた
汚染虫だわ!と二人はそれぞれ心の中で叫んだ
食堂に汚染虫が居るなんて考えられない!と二人はそれぞれ思った
とにかく古くて広いブログリューラン魔法学校には森もあるし小さな湖もあってその広大な敷地に大昔の王様が建てた城を改装した学校と宿舎が何棟も建っている
だから虫みたいな生き物がどこかに隠れていても不思議ではないのだけれど
汚染虫は別格でとくに食堂や宿舎には専任の虫退治魔道士が居て朝から晩まで一日中効果のある虫避け魔法陣を要所要所に印しているから災い虫などいるはずないの
二人がびっくりしたのは当然でそんなもの授業以外で見たのは初めてで変な形の小さなものが動いているから
そしてその汚染虫に立ち向かって闘っている同じくらいの大きさの人形に目が丸くなっている
「ああーっやられちゃいそう!」急に立ち上がったクララが大きな声を出したので周りの生徒たちが驚く
「なにクララボウどうかしたの?」みたいなことを何人かの女子生徒が口走り「なんの騒ぎだよっ」と男子生徒がわいわいし始める
「皆さんお食事時間中は静かに頂くのが本校の決まりですよ!」強く叱責したのは今週の当番教師のザネックスアルリエールで魔法陣形象術の指導講師
「でも先生あんなに大きな汚染虫がいるんです」クララが物怖じしないでそう言うと食堂の騒ぎはぐっと大きくなって最上級生のテーブルから離れている中級クラスや初級クラスの生徒はよく見えないのでとにかくがやがや騒ぐ
トリクルトピンはピグマリオンが汚染虫を退治しようとして闘いを挑んだことは良しとしながらも皆に見つかって欲しくもないので急いで数式呪文をナプキンにブルーベリーの実の汁で書いて可愛い人形を回収する
脚を2本と片方の触角を折られた汚染虫は傷ついた箇所からねばねばの汁を垂らしながらテーブルの下に這いずり込んだので女の子たちは一斉に悲鳴を上げて立ち上がるは退治しようと席を離れる男の子が何人か集まるはの大騒ぎになる
ザネックス先生はやむを得ず虫が這い込んだというテーブルの下に向けてヒャドを放つからそこから離れるように生徒に注意した上で限定呪文付のヒャドを放った
posted by 熟超K at 23:50|
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魔法小説
2024年11月07日
食事の時には黙って静かに頂くのが格式高い王立ブログリューラン魔法学校の鉄則だ
だが耳を澄ましてみると貴方にも小鳥の囀りのような高音域の会話が食堂全体に波のようにうねっているのが分かるはず
今朝も機嫌の良いアジズボワールナグラはきれいに整えられている口髭が自慢の学生食堂の料理長
次々に入って来る生徒たちがクラスごとにしっかり席に着いたのを見て運ぶ妖精にスープ皿を運ぶよう命じる
風の中で遊ぶのが大好きな運ぶ妖精たちはノリノリになるととんでもないことをしでかすけど普段は大人しくて気のいい連中だ
ただ仲間が大勢集まると大騒ぎしたくなるのを止められないのは皆さんもご存知の通り
それで運ぶ妖精たちの絆をアジズボワールの呪文によって2時間ほど解くことで妖精は一人一人が自由になって食器類やお料理を運んでくれると言う訳
(運ぶ妖精たちはいつでもどこにでもいて人間のことも好きなようだ)
だったらアジズボワールはさぞかし忙しいだろうと心配された方々はご安心を
調理場では料理長補佐のナムルネムルトプルがレシピ呪文を次々詠唱して出来た料理を皿に盛り付けていく
生徒食堂のきりもりは全てこの二人でやっていることに驚かれるだろう
参考までに助教授以上の先生方は生徒食堂より手狭ではあるけれどずっと調度品も食材も高級な師範食堂で量ではなく味を重視したお食事を召し上がっている
囀りのような生徒たちの静かなぺちゃくちゃはスープ皿が各自の前に並び終えた瞬間に消える
後は食器にナイフやフォークが触れる音が微かに流れるくらいで誠に品良く生徒たちは朝食を摂っているのだけれど食堂の静謐さは各学年クラスの級長副級長が唱えているサイレンスのお蔭なのは言わずもがな
posted by 熟超K at 22:08|
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魔法小説
2024年10月27日
チャルラチャララはお気に入りの髪巻き上げ魔法を何度かやり直してどうにか鏡に微笑めた
鏡は由緒ある魔法の鏡らしく丁寧に持ち主の一番気に入る姿を映してあげようとしているのだけれど本人の好みがくるくる変わるのに嫌気が差してしまって下の方なんかは薄ぼんやりとなってしまっている
そんな訳で鏡の中のチャルラチャララはもうどこかに行ってしまおうかと思うのだけれどなんとか我慢して微笑んだままでいる
部屋の反対側では異世界の妖力鏡を覗き込む振りをして背中側で魔法鏡を覗き込んでるチャルラの美しい髪をチラ見しているハナレンブリンがため息をつく
そもそもチャルラとハナが仲良く居られるのは互いに相手の髪色が憧れなのに口に出さないからなのだ
皆のお部屋の扉が開いて廊下が魔法生で溢れると最上級クラスの級長ガブリッシュデイが短く手を叩いて食堂に行くことを促す
副級長のナナーシャクルスが銀色の表紙の『クラス管理簿』を取り出して“本日の頁”を浮かび上がらせる
でも最上級クラスともなるとそんな脅しはほとんど通じなくて女の子たちはぺちゃくちゃと男の子たちはがやがやとざわめきながら食堂にさっさと向かう
大体お腹の空いた最上級生ならなにも言われなくっても朝食の待つ場所に急行するのは昔も今も同じだ
とは言ってもだらだら歩きの者は一人二人はいるもので同室のタリリンドララの姿は廊下から階段に姿を消したのにトリクルトピンの姿はまだ廊下にさえ見えていない
ナナーシャが“本日の頁”にそのことを記録させようとすると頁が光って記録できない
またあの子がインチキ科学魔法で記入を邪魔してるのねと思ったナナーシャは強制呪文を唱えてこの悪行を記録させようとする
すると頁から紫色の炎が噴き出してナナーシャの白くてほっそりした指を焼きそうになる
慌てて『クラス管理簿』を放り出しかけるのを級長のガブリッシュが物体浮遊術で受け止めて「おっと大事な管理簿を放り出さないでくれ」と偉そうにのたまう
ナナーシャが見ると管理簿は燃えても焦げてもいず目の前に浮いている
耳まで赤くして「今炎が出たのよ」と呟いたが言っている本人もそれがなんともないので慌てた自分が恥ずかしいだけ
「今朝のジャムはとび色なつめのジャムらしいよ」と声を掛けてナナーシャの横をすり抜けながら囁いていったのはトリクルトピンではないか
「あなたが遅いからわたしが困らされたのに」と抗議している間に床滑空術を使っているのかトリクルはすすーっと先に行ってしまっている
「あいつのことはほっておくのが一番いいんだよわかってるだろう」とまた賢しらげに鼻から抜いた発声法でガブリッシュは忠告しながら「だが廊下で床滑空術を使ったということは記録してくれたまえ」と付け加える
posted by 熟超K at 15:28|
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魔法小説