2021年03月27日

春だったんだ


ひさしぶりに

とぉってもひさしぶりに

歩いているぼくは顔をあげてみる


散歩道のなんでもない樹が

いっぱぁいの薄ピンクの花房に覆われていた

そうだね

春だったんだね


学校帰りのこどもが笑いながらあるいている



posted by 熟超K at 11:35| Comment(0) | 私的な詩

2021年02月03日

砂漠だとしても

底辺のカーブはいつでも決まったカタチをしている
足が踏ん張れない摩擦係数の小ささが
そこに至った者すべてをつらい闘いに縛り付ける

そこにちょうど男と女が居たりすると
物語はますますややこしくなって
ちら見してる神々を喜ばせたりする

男と男でも女と女でも親と子でも見知らぬ同士でも
人ってやつは結局ややこしくなる
それが独りでもややこしくなるのが人だ

ごくごくごくたまに
転んだり力が抜けたりひと休みしてたりしてる人人人を足場にして
上に揚がれる奴がいるがまずほとんど滅多にそんな奴は出てこない

底辺から見上がてたときは
空かと思ってた場所もそんなに楽な場所でない知ったとき
上に行けた奴はまあ下に比べればそんなに悪くもないさと思う者と

まだ上があると思い直す者がいるのは神々もご存知だ
そこで今度はちょっと手助けしたり意地悪したり
その先を目指したくなる旅なんか用意してやったり

行き先が分からないと行けなくなる女
行き先が分かっていると行きたくなくなる男
生まれてしまった子に任せて先に進むことになる

たとえそこが砂漠だとしても
posted by 熟超K at 17:43| Comment(0) | 私的な詩

2021年01月28日

少年時代〜「疑問」

ぼくはなぜ生きている
ここにいるのは本当のぼくなのか
本当にぼくはこんなことを
考えているのか
うそかも知れない
うそだ
文字になったその人の考えは
もう死骸だ
ぼくはこんなことを書くつもりじゃあない
ぼくは
もっと別のことを書くつもりだったんだ
ちゃんと、ぼくの考えていることが書けたらなあ
いや
こんなことを書くつもりじゃあないんだ
こんなことを考えなくなってから
これを読むとばからしいだろうに
なぜぼくはこんなことを書くんだ
ここに記した一群の記号は
本当にぼくの書こうとしたことを印してあるのか
なぜ
「ぼくはなぜ生きている」という書き出しで書き出したぼくが
こんなことを書いているんだ

*
*
*

1965年1学期の詩集より。原文のまま
posted by 熟超K at 14:34| Comment(0) | 私的な詩

2020年12月22日

夜の音

ふと夢の最中に目が覚めてしまうと夢を繋げなくなって、なにかが頭の中をくるりくるりと廻り始める
夜の中を列車の鉄輪が、鉄路の継ぎ目を拾いながら、ごとんごとんごとんごとん、と
走って来て通り過ぎて去って行く、その音が懐かしい音が、夜具の中の私も運んで行こうとする

静かになっても夢は訪れず、なにかが頭の中でゆるりゆるりと廻っている
こんな夜中の目覚めの時間昔の時間なら、柱時計の音がしていた
こっちこっちこっちこっち、と
過ぎる時間来る時間が隊列揃えて行進して来て通り過ぎて行く行く、ずっと眠りにつくまで行進

遠くでサイレンが鳴って、犯人か火災現場か怪我人かをどこからか連れて来て、どこかに連れて行く
頭の中のなにかがなにかを思い出させそうで、思い出せないなにかのことを私に囁く
長い真っ暗な時間の中で、昔の電話の鳴る音とがしゃっと、受話器を外す音があったことを私に

やがて夢がまた始まる
posted by 熟超K at 15:00| Comment(0) | 私的な詩

2020年12月12日

さよなら夏

朝の光がちょっとずつはぐれていって
日焼けの肌がぼんやりし始める

君のかたちがゆっくり乾いて
静かになっていく心のリズム

僕らはどれも誰もそれらを止められないまま
夏はこっそり終わっていく
posted by 熟超K at 16:36| Comment(0) | 私的な詩